映画『主戦場』上映取り止め問題の検証とKAWASAKIしんゆり映画祭再生に向けた取り組みについての報告
2019年の第25回KAWASAKIしんゆり映画祭(以下「映画祭」という。)において、配給会社へ上映申込みを行っていた映画『主戦場』について、共催者である川崎市から「懸念」を示されたことにより、映画祭の運営組織であり意思決定を行う「運営委員会」が取り止めを決定しました。この上映中止の経緯が新聞等で大きく報道され、「表現の自由」を損なうものとして各方面から厳しいご批判をいただきました。
今回のご報告にあたり、上映取り止めによって無自覚に「表現の自由」を脅かし、市民社会と民主主義を支える普遍的な価値を毀損したこと、映画祭・映画上映に関わる者が持たなければならない責任を放棄したこと、これにより映画関係者並びに市民の皆様の信頼を損なったことについて、あらためて深くお詫び申し上げます。
上映取り止め問題の報道後、この問題に関する「オープンマイクイベント」を実施した際には、多数の市民・関係者の皆様にご参加いただいたにもかかわらず、主催者として十分な説明を行えず、映画関係者の皆様、共催団体の皆様にも多大なご心配をおかけしたことをお詫びいたします。
この後、多くの皆様からお寄せいただいご指摘等を踏まえ、映画祭内での民主的な議論を経てスタッフの多数意思により上映を決定し、必要な対策を講じたうえで映画祭最終日に上映を行うことができました。上映にお力添えをいただきました関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
映画祭終了から1年半余り経過しましたが、この間、主催団体であるNPO法人KAWASAKIアーツの理事会のもと、「準備委員会」(理事と市民スタッフから構成)での検討を経て、新たな映画祭運営組織「実行委員会」を発足させるとともに、スタッフを中心とする「映画祭再生プロジェクト」を立ち上げ、映画『主戦場』上映取り止めをめぐる経緯について時系列に沿って検証を行いました。映画祭の問題点を明らかにし、取り組むべき課題をまとめ、映画祭の再生に向けて取り組んでまいりました。今般、私どものこれまでの取り組みについてご報告させていただきます。
2019年の映画『主戦場』上映取り止め以降、このような過ちを繰り返さないようにするため、従前の組織運営体制の刷新を皮切りに、映画祭の理念や運営方針の策定、さらには「映画祭再生プロジェクト」の取り組みなどを通じて、関係者・市民の皆様からの信頼を取り戻せるよう再生への道筋を探ってまいりました。
取り止め問題の検証作業は、今回のご報告をもって一区切りとさせていただきますが、映画祭再生への道のりは遠く、改革もいまだ道半ばと捉えています。映画『主戦場』上映取り止めという“萎縮”が映画の上映のみならず、あらゆる文化芸術表現の場の萎縮にもつながることで「表現の自由」そのものを脅かしたことを、映画祭に関わる市民スタッフ一人ひとりが真摯に受け止めていくことが映画祭再生の出発点です。
KAWASAKIアーツ理事会並びに映画祭は、運営団体に相応しい使命と責任を強く自覚し、映画祭に求められる自主性・自立性を保ちながら活動できるようにするため、再生に向けて不断の取り組みを進めてまいります。今後も、市民や関係者の皆様から忌憚のないご意見をお寄せいただきながら、再生への歩みを前に進めてまいりますので、KAWASAKIしんゆり映画祭へのご指導とお力添えを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。